モチベーションに頼らず創作をするメソッド
『サ道』でおなじみのタナカカツキさんの近作を読んだのだけど、サウナブームとは一線を画す予想外の内容でおもしろかった。

PARCO出版の「サ道 ととのいの果てに」をご紹介いたします。
そもそもサウナ好きなので氏の『サ道』も『サ旅』も全て買っていて、『今日はそんな日』も同じノリのマンガエッセイなのかなと思って読んだらまったく予想外の「創作のための自己管理メソッド」が中心の本だった。
もちろんサウナという軸はありつつも本編の中身をざっくり言うと、モチベーションに頼らず仕事をする方法、ということになるだろうか。
このメソッドは大きく分けると二点に集約されていて
「朝4時に起きて12時まで集中して働く」(固定化)
「タスクは20分区切って取り組み時間延長はしない」(ルーティン化)
これだけのシンプルなもの。ストイックに見えるが著者曰く自分に甘く快適さを追求した結果このスタイルに落ち着いたのだという。ポモドーロテクニックのように休憩を挟むこともしないそう。8時間x3タスクで最大24タスクになるが、なんやかんやイレギュラーな中断を挟むので20タスク程度になるらしい。
この方法の優れているところはとにかく「やる気に頼らないで良い」というところだと思う。やる気に頼った仕事スタイルだと、やる気が降ってくるのを待ついわゆる「やる気待ち」をしてしまい結果的に余暇も削れてしまい余裕がなくなっていく。自分が決めた時間に自分が決めたタスクを行うことで日々の生活が「ととのっていく」ということのようだった。
このエッセイでは岡本太郎さんが朝型生活を営む創作者の例に出てくる。そういえば村上春樹さんも長編執筆中は3時起きで昼頃には仕事を終えていてそのルーティン化された生活を執筆が完了するまで続けると言っていた(少し曖昧な記憶ですが、1Q74の頃に読みました)。地に足のついた生活で、淡々と進めていく仕事の進め方というのが創作においても重要ということだった。
そしてサウナ。サウナは思考の世界と感覚の世界へとモードを切り替えるスイッチのような存在として機能しているという。これは自分も体験上よくわかる。サウナは「頭を空っぽにする」ことを強制するから、大量の情報を処理し続けていた脳を違うモードに切り替えてくれる。適度な疲労感を身体にもたらしてくれるのも毎日同じ時間に就寝するために良い効果をもたらす。
今回紹介したのはサウナの話と生活を改善した話が混じり合った不思議な読後感の二冊の本だが、生産性メソッドの本を読む以上に影響を受けてしまった。今後もひとりのサウナーとしてサウナを生活の軸に据えつつライフスタイルをよりととのえていきたい。